・梅が枝 第四段 薫物合せの後の宴遊
月さし出でぬれば、大御酒など参り給ひて、昔の御物語などし給ふ。霞める月の 影心にくきを、雨の名残の風すこし吹きて、花の香なつかしきに、御殿の辺りいひ知らず匂ひ満ちて、人の御心地いとえんなり。
(略)
御車かくる程に追ひて、
「珍しと故里人も待ちぞ見む花の錦を着て帰る君
又なき事と思さるらむ」と、あれば、いといたうからがり給うふ。次々の君達にも、ことごとしからぬ様に、細長小袿などかづけ給ふ。
歌を歌い和歌を読む楽しみ、当時の貴族社会の遊びの場面。
今はほとんどなくなっている、即興の歌を楽しみあう。
・和歌の伝統
日本の本来の歌の伝統は、神話に出てくる古代歌謡やその後に出てくる万葉集。
古今、新古今は、古代の和歌が持っている言葉の多義性を縁語や掛詞で技巧的な形で見事に発達している。それを現代語訳して膨らみを持たせるのは至難の技。 折口信夫は「むく犬の洗濯」と言っていた。
和歌は、奈良から平安時代には、漢詩・漢語の影響で乱れた時代があった。近代に入るとヨーロッパの文芸主潮が非常に大きな感化を与えた。
現代の短歌はヨーロッパの詩の表現や日本の近代以降の新体詩に影響を与えられ、そ ちらに惹かれるのは無理もないが、それを過ぎた後で、短歌の表現が本来の方向に帰ってきた後で、どういう形が短歌の上に確立してくるかを期待と夢を持って考えている。
・即興の魅力
即興の歌は意外に大事。自分の心に感受した、湧き上がってきた心の濃密な動きを、それをすっと言葉でとらえて、詩の定型に残そうとする、伝えようとする。短歌の一つの魅力であり、日本人の心を他者に伝える響きあいを深くしてきた。
縁語、掛詞、本歌取りは、かなり即興性を要求せらるる作り方。調べも推敲を重ねることで深まることもあるが、心の反応の鋭いすばやさが生み出すことが多い。
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