テキスト・95頁11行目より
東の妻戸に、立てたてまつりて、我は南の隅の間より、格子叩きののしりて入りぬ。御達、
「あらはなり」と言ふなり。
「なぞ、かう暑きに、この格子は下ろされたる」と問へば、
「昼より、西の御方の渡らせたまひて、碁打たせたまふ」と言ふ。
さて向かひゐたらむを見ばや、と思ひて、やをら歩み出でて、簾のはさまに入りたまひぬ。
この入りつる格子はまだ鎖さねば、隙見ゆるに、寄りて西ざまに見通したまへば、この際に立てたる屏風、端の方おし畳まれたるに、紛るべき几帳なども、暑ければにや、うち掛けて、いとよく見入れらる。