現代の和歌について

目次
1. 関節が外れていく現代の和歌
2. 近藤芳美さんのこと



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1.関節が外れていく現代の和歌




映像&音声
23分11秒

 

・歌会始の歌 平成19年の歌会始のお題は「月」

・ 「月・雪・花」は、昔から日本の美意識の大事な核


「今、いろんな世間の歌を見ていて起こる思いというのは、余計な譬喩。つまり譬喩で言うときには、ぎりぎりの、これ以外にはないという譬喩を持ってきて言われるのならば、それはいいんですけれども、極めて平板な、常識的な譬喩を使われると、どうしてこの譬喩をやめてしまって、直情的に、見たとおりの表現で言われないんだろうと人ごとながら腹が立つわけです。僕なんかはおとなしいですが、斎藤茂吉という人は、選歌しているときにそばにいたら大変だそうです。」


・「なましらけた譬喩表現」と「余分な条件法」を避ける

 目つむりて蜩(ひぐらし)の声聴きてをり八月は亡きひとに逢ふとき

 目つむりて蜩(ひぐらし)の声聴きをれば八月は亡きひとと目が逢ふ  (原作)

 無住寺の右も左も兵の墓夏草しげく熱(いき)れ立ちくる

 無住寺の右も左も兵の墓夏草しげく熱れ立ちゐし  (原作)

 長病みて帰りし庭にひな鳥のなき寄る聞けば心やすらぐ

 長病みて帰りし庭にひな鳥のさえずり聞けば心やすらぐ  (原作)

 

「言葉も、乱用されると見事に磨滅するわけです。その磨滅した言葉は絶対に使わないという神経があったら、いい歌ができるのになと思うんです。日本の自然というのは、こんなふうに列島全体が都市化しても、中国や大陸の砂漠地帯みたいなところから比べればはるかに繊細で、詩歌に歌うのに価する光景だと思うんです。そんなことをもう少し日本人全体が自分たちの生活の中で大事にしていったらと思うんです」

 

2.近藤芳美さんのこと



映像&音声
24分15秒

 

・近藤芳美さんにお礼を述べたい2つのこと

「軍隊から解放せられて、苦しい、しかし新しい戦後の時代を生きようとする生活、あるいは近藤芳美の『埃吹く街』『早春歌』は、戦争中の若い二人の恋愛体験、やがて戦後の時代になって、結婚して家庭を持って生きていく『埃吹く街』の中での生き方、そんなものが歌になっている。(中略)ちょうど兄貴のような人たちが、敗戦の時代、あるいは戦争中の時代の体験を新鮮な歌にして、歌集に出してくだすった。先生のところで先生の影響を当然受けているわけですけれども、同時に、もう一つ身近な形で歌の影響を受けたのはその人たちだったわけで、その近藤さんに、亡くなられて、心の中で礼を言いたかった。」

・中村憲吉の影響力――「澄んだ叙情」こそ歌の命

 この家に酒をつくりて年ふりぬ寒夜は蔵に酒の樽音  中村憲吉

 磯を行くひまだに母はあはれなり我が新妻を愛(を)しみたまへり  中村憲吉


・「時代を詠む」のは歌人の宿命――自歌より

 弓なりに身をひきしぼる列島を咲きさかのぼる桜前線

 坂の上の雲あかあかと夕映えてまたひとり子が殺されにけり

 

・歌集『バグダッド燃ゆ』(砂子屋書房)――小説家から届く共感の声

 「あの桜児のうたの連作をまた読み返している。小説の手法を感じます」(大江健三郎さん)

 「あの歌集一冊が長編小説だね」(丸谷才一さん)




岡野弘彦先生 源氏物語全講会 2006 (C)岡野弘彦・財団法人エンゼル財団