1. 21世紀においては、経済のグローバル化への関心ばかりではなく、心と心の国際文化交流がますます大切です。その意味で、日本人の愛と美意識の世界が描かれた『源氏物語』を、確かな学術研究に基づきながら国際化することは、大切な仕事といえましょう。
2. しかしながら、まだこの取り組みは本格的に行われているとはいえません。文化功労者の小西甚一筑波大学名誉教授は、『源氏物語』は「世界文学」と呼ばれるにふさわしい人間普遍の内容を持ちながら、その国際化はまだ発展途上であり、今後、専門領域を超えた学際研究によって、その国際的価値を掘り起こすことが必要であると述べられています。
3. 小西先生のアドバイスを受けて、私たちが具体的に目指すのは、古来語り継がれてきた『源氏物語』の言葉、あるいは『源氏物語』をもとにした様々な表現世界を楽しみながら、『源氏物語』に関心を寄せる国内外の誰もが、その本質へと誘われるようなマルチ・メディアのインターネット・コンテンツの開発とその配信による国際文化交流の推進です。
4. このコンテンツ開発において、私たちは、本居宣長・三矢重松・折口信夫の「国学」(古い文献・言葉の中にその国固有の精神を手繰り寄せ明らかにしようとする学問)の考え方に基づき、『源氏物語』の「言葉」の中に、古人の心を奥深く捉える味わい方を幹に置きます。また、現代語訳では、学術的成果を踏まえた格調高い訳とされる谷崎潤一郎の『源氏物語』(中央公論新社刊)の味わいを大切にしてゆきます。
5. 本フォーラム(シリーズ)は、上記の趣旨のもと、『源氏物語』(およびその周辺の古典)の中にある「日本人の根生いの心(日本人が日本人として古来から有する心)」を確かめながら、「世界文学としての『源氏物語』」が持つ意義とその国際化の手だてについて、具体的な方向性を検討するものです。このフォーラムの内容は映像化し、ブロードバンドのインターネット上で、国内外の大学・研究機関の学術研究・教育に資することを予定しています。